破局を夢見がちな少年でいられた2020年、確かにほんのひととき街から人は消え去ったけれど、しかしそれは特に何事も意味しなかった。
少年のままではいられなくなった2021年、だらっと続くだけにも見えた日々の道のりは、自分の脳次第でいくらでも改変できると知った。
淡々と。粛々と。
間違った恋のささくれを、無情な波風と土埃を、抑えて、鎮めて、なだめて、どうかできるだけ凪いでいて。
いま恋うるべきなのは、たぎる諦念でも、あふれる自嘲でも、まして渦巻く絶望なんかではなく、もっと平熱で雑駁で静かなロジックの集積。ちぎられたリアルの紙片。大人たちの言葉の上澄み。
ようやくわかった。今までの自分は楽をしていた。この世界に甘えていた。激情に身を任せ、自傷を悦び、たまゆらの美しさに甘え、皮肉を装い、社会を呪い、自分は駄目な奴だと吐き捨てて。やがて海に沈む平家の郎党にでもなったかのように。
けれど残念なお知らせ。俺たちにはカタストロフなんてやってこない。俺たちは海の底には沈まない。ひとりで格好良くなんて死ねないし、謎は決して解明されないし、意味深な物語に引き込んでくれる運命の人だって現れない。
立ちはだかる凶悪な敵なんていやしない。
だからそのエモーションは胸に仕舞って、自分なんてものは消し去って、歪んだレンズで世界を見ないで、狂気は秘めて秘めて溶かしきって。
格好つかないけれど許してほしい。爪を研いだら研いだだけ、それはもはや自分のためじゃなく、どこかで同じように泣いていた誰かのために使うから。